深刻な子どもの“いじめ”問題。いじめは、被害者を精神的・肉体的に傷つけ、一生忘れられない出来事となり、自ら命を絶ってしまう恐れを生じさせる悪質な行為です。
『もしかしたら、子どもがいじめられているかもしれない』
ささいなことから始まる子どものいじめ。それがもっと悪質ないじめにエスカレートするなんて子ども自身はもちろん想像できません。そのため、親が知った時には子どもの心と体はボロボロの状態であることがあります。
もし子どもがいじめにあっていることに気づいたら、親としてどうすれば良いのでしょうか。
子どもからのサインを見逃さないで
いじめを受けて傷ついている子どもは、親を悲しませたくない、迷惑をかけたくないという思いから、自分がいじめられていることや学校へ行きたくないことを親になかなか口に出して言えません。そのためいじめの事実が親には伝わりにくいのです。
では、いじめの早期発見は難しく、子どもがボロボロになるまで親は分からないものなのでしょうか。
そんなことはありません。言葉で伝えられなくても、『いじめ』があれば毎日の生活の中に普段とは違う行動や態度が現れます。直接親に伝えることはできないけど、いじめの兆候があったり、いじめられているというサインを出しているのです。
チェックをしよう
文部科学省は「いじめのサイン発見シート」を作成しています。「いじめのサイン発見シート」を使って、普段との生活の違いを確認しましょう。
-朝(登校前)ー
・朝起きてこない。布団からなかなか出てこない。
・朝になると体の具合が悪いと言い、学校を休みたがる。
・遅刻や早退が増えた。
・食欲がなくなったり、だまって食べるようになる。
ー夕(下校後)ー
・携帯電話やメールの着信音におびえる。
・勉強しなくなる。集中力がない。
・家からお金を持ち出したり、必要以上のお金をほしがる。
・遊びの中で笑われたり、からかわれたり、命令されている。
・親しい友だちが遊びに来ない。遊びに行かない。
-夜(就寝前)ー
・表情が暗く、家族との会話も少なくなった。
・ささいなことでイライラしたり、物にあたったりする。
・学校や友だちの話題が減った。
・自分の部屋に閉じこもる時間が増えた。
・パソコンやスマホをいつも気にしている。
・理由をはっきり言わないアザやキズアトがある。
ー夜間(就寝後ー)
・寝つきが悪かったり、夜眠れなかったりする日が続く。
・学校で使う持ち物がなくなったり、壊れている。
・教科書やノートにいやがらせのラクガキをされたり、やぶられていたりする。
子どもとコミュニケーションをとる
子どもがいじめられていると分かったら、まずは冷静になって常に子どもの味方でいてあげてください。子どもにむやみに話を聞き出したり、急に距離を縮めたりすると子ども自身も対応の仕方に困ってしまいます。『必ず守る』『絶対助ける』ことを真剣に伝え、安心感を与え続けてください。
また、無理やりいじめの内容や状況を聞き出そうとすると逆効果になってしまうことがあるので、子どものペースに合わせて気持ちを受け入れてあげましょう。
『やり返しなさい』『無視しなさい』『いじめられる方も悪い』『何かしたんじゃないの?』といった大したことじゃない、本人にも悪いところがあるというような言葉は避けましょう。
自分が悪いんだと余計に自分を責めてしまい、どんどん口を閉ざしてしまいます。
学校との連携
学校との協力は不可欠です。教師や学校関係者にいじめの状況を共有し、正確な情報を得ることで解決への第一歩を踏み出せます。
また学校へ話す際にはなるべく被害内容をまとめ証拠を集めておきましょう。話を聞いてすぐに“いじめの事実を認める”ことをしない学校が少なからずあるのが現状です。
いつ・どこで・誰にいじめられたのか、どんなことをされたのかを具体的に文書に書き、外傷がある場合などは、その写真も証拠として残し、場合によっては病院に行き診断書を受け取ってください。
学校へ話すことで『本人の思い過ごしかも』『大袈裟な親と思われるかも』『相手の子を傷つけることになるかも』と思い、相談をためらってしまうこともあるかもしれませんが、対応が遅れるといじめが深刻化していきますのですみやかに対処しましょう。
学校へいじめの相談をするのは法律上の義務でもあります(いじめ防止対策推進法23条1項)。
第二十三条 学校の教職員、地方公共団体の職員その他の児童等からの相談に応じる者及び児童等の保護者は、児童等からいじめに係る相談を受けた場合において、いじめの事実があると思われるときは、いじめを受けたと思われる児童等が在籍する学校への通報その他の適切な措置をとるものとする。
いじめ防止対策推進法 | e-Gov法令検索
子どもの自己肯定感を高める
自己肯定感とは自分のことを好き!と思える気持ちです。いじめによって子どもは自分のことを『自分なんて』や『自分がダメなんだ』と自分の事を否定的に感じてしまうようになります。
人はそれぞれ性格や個性があって当たり前ですが、それはいじめても良いと理由には全くなりません。理不尽に否定され続ければもともとあった自己肯定感も低くなってしまい、一度低くなった自己肯定感を上げることはなかなか難しいことです。
もし子どもがいじめにあったら親は必ず味方でいてあげてください。そして子どものありのままの言葉や状態を受け入れプラスの声がけをしてあげることを何度も繰り返してください。
子どもの中で「自分は大切な存在」なんだと思えてくると、自己肯定感はどんどん伸びていきます。そして子どもの自己肯定感を高めることは、いじめからの回復に向けて重要なステップとなります。
法的な選択肢を考える
状況が深刻な場合、法的な選択肢も視野に入れることが重要です。法的なアプローチが必要な場合には、弁護士や法的な専門家と協力しましょう。
自分で学校と話すことが、時間的・精神的に難しいと感じる方は、いじめ問題を取り扱っている弁護士に相談して対応を依頼する方法もあります。
相談窓口 24時間いじめ相談ダイヤル
0570-0-78310(なやみ言おう)
24時間全国どこからでも悩みを相談することができます。
おわりに
いじめは早期発見と適切な対応が重要です。
子どもがいじめに遭った場合は、焦らずに冷静かつ効果的に対処しましょう。親としては子どもをサポートし、解決策を見つけるために積極的に行動していくことが大切です。
もし学校の対応が納得できなかったり、事態が変わらないようであれば、転校をするのも一つの方法です。大切にして守るべきは『子どもの人生』と『子どもの命』です。
そして親は子どもの一番の味方でいてあげてくださいね。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。